Best My Friend 1日目−2−




『ねぇねぇ! 右近ちゃんが、ついに出てちゃったんだって!!』
『ええっ!!』
『それって、ヤバくない?』
『ヤバイよぉ』
『……また衛府、気がつかなかったんだねぇ』
『本当』
『平和ボケとかじゃない?』
『でもどうしよう……』
「私たちがどうこう出来るものではないだろう」
『あっ桓武さん』

 精霊達のおしゃべりにいきなり割り込んできたのは、都を京都に移し、平安の時代を始めたかの有名な桓武天皇だった。
 彼は平安神宮に祭られているのだが『天王』という素晴らしい位があることで何処へでも自由に行き来出来るのだ。

『久しぶりだねぇ』
「ああ。まったく、どうしてこう無茶をするのかね。右近も、左近もだ」
『右近ちゃんはしょうがないと思うよ? だって左近ちゃん絡みだもん』

 くすくすと笑い声が聞こえる。

「……そうなのか。とにかく、しばらく待ってみよう」
『桓武さんがそういうのなら、そうしましょう』

 さすがは天皇。人(精霊)を沈めることが上手かった。





* * * * *





 一人の男が夜の今日との町中に立っている。

 女と見間違えられそうな顔つき。身体は細く、水色の着物と藍色の袴をはいている。その男には右足の膝からふくらはぎにかけて、大きな一筋の傷があるが、袴に隠れてそれは見えない。

 彼は寂しそうな眼差しで暗い空を見上げ、歩き出した。



To be continued