SUNNY,WARM DAY




 「今日は大掃除するッス!!」と朝早くに叩き起こされた。
 それはもう一人の勝手に住み着いている奴も同じようで、眠そうな顔でリビングのソファに座っていた。
 用意されていた朝食を摂り、窓に目を向ける。





 暖かそうな春の日差しが差し込んでいた。





 何と無く、愛しいあの者が訪ねてきそうな予感がする。





 そう思って、待ってみることにした。





「お城の中もいいけれど、お外にさんぽに行こう?」

 彼女はここに来るたびにそういっていた気がする。
 散歩は私自身も好きだ。でも、こんな陽の高いうちからしようとは思わない。



 ……いや、しようとは思っていなかった。
 彼女が私の前に現れるまでは。



 上手く断ろうとしている私の腕をとり、半ば無理やり外へと連れ出した。



 本来相反する陽の光。
 暖かい風。
 それは私に新たな物を与えてくれた。





 大木の下に置いた木製のリクライニングチェアとテーブル。

 まだ朝も早い。いつ頃、訪ねてくるかはわからない。が、予感がする。
 甘い期待を抱きながら、持ってきた本を開いた。





 どれくらい時間がたっただろうか。
 心地よい風と木々の間からこぼれる光にうとうとしてきた。
 風がパラパラと本のページをめくっていく。





 ……! 聞こえた。
 あの音を私が間違えるはずがない。





「こんにちは!」

 満面の笑顔と共にやってきた愛しい人。

「いらっしゃい、ポエット」

 風が読んでいった本にしおりを挟んで閉じる。しおりに使っているのは以前、ポエットからもらった四つ葉のクローバー。
 今日のポエットはなんだか楽しそうで。

「どうしたんだ?」
「あのね! ママと一緒にクッキーを作ったの。ユーリに食べてもらいたくて持ってきたんだよ」

 手に持っていたバスケットを開ける。
 甘い香りがする。多少焦げているようだが、そんなことは気にならない。
 きてくれたという事実がただ単純に嬉しい。

「そうか。それでは、お茶を持ってこよう。待っていてくれ」

 小さな天使に椅子をゆずり、城に戻った。





 キッチンはあいつの領域なのであまり立ち入らないが、今回は別。
 気に入っているお茶の葉を選んで丁寧にいれる。ポエットのクッキーに合えばいい、と思いながら。





 純白のトレイにポットとカップ二組を乗せ、ポエットの待つ庭へと戻った。

「……ポエット?」

 テーブルにお茶を置き、顔をのぞき込む。
 ……穏やかな……寝顔。
 さらさらと金の髪が風に揺れる。



 せっかく二人きりで会えたのにこれでは……とも思うが、起こすのも悪い。



 溜め息をついて、バスケットのクッキーを一つ。





 優しい優しい味がする。





「ゆっくりおやすみ、ポエット」

 頬に触れるか触れないか位のキスをして、大木の下に腰を下ろした。



 こんな風に過ごす日も悪くはないな。と思いながら、目を閉じた。





 春の晴れた、暖かな日の出来事−−−



end





1000Hits記念企画のキリリク作品です。
この作品はリクエストしてくれた蒼月様に捧げさせて頂きます。
遅くなったうえに拙い話ですが、もらってやってくれると嬉しいです。
ご報告ありがとうございました!!

2003/06/14