Sweet Lovers




 チョコを細かくきざんで湯せんにかける。「テンパリング」って言うのをちゃんとやればキレイに出来るって言ってた。
 手伝ってくれるっていってくれたけど、一人でやってみることにしたの。だって、その方が気持ちが伝わるから。
 溶けたチョコを型に流して固まるのを待つ。



 みんなに渡すのはクローバーの形だけど、ユーリだけは特別。ぴったりなのを見つけたんだ。
 喜んでくれるかな。



 あ! チョコにお願い事するの忘れちゃった!
 ……どうしよう……固まったあとでも大丈夫かな……?



 不安を残しながらも完成。
 こわさないように型からはずして……一個一個袋に入れて……リボンでしばって……できあがり!
 そして、チョコレートさんにおまじないをかける。



「みんなが幸せになれますように……」





 二時頃。



 誰よりも先に渡したくてユーリのお城へ。いけないってわかってるけど、お部屋を覗いてみる。



 いた!



 窓をコンコンとノック。
 気づいて、窓を開けてくれた。

「いらっしゃい」

 「今度は玄関からおいで」っていいながらお部屋に入れてくれた。
 「うん」ってうなずくけど、誰よりも先に渡したかったの。だって、玄関から入ったらアッシュさんが出ちゃうでしょ? だからなの。



 机の上に書きかけの譜面とペン……。



 お仕事中だったのかな……?
 ジャマになる前にはやく渡してかえらなきゃっ!!


「あっ……あのね……」

 たくさんのチョコにユーリに渡すチョコが紛れちゃってなかなか見つからない。
 ああ〜どうしよう〜……。

「……今日来てくれたということに……少しは期待しても良いか?」

 ちょっと聞きづらいユーリの言葉。
 ……もしかして、チョコのこと?

「もちろんだよ!! ユーリに一番に渡したくて、一番最初に持ってきたの!」

 やっと見つけられた、赤いリボンがついた特別なチョコレート。
 一番の笑顔で渡す。
 喜んでもらいたいから。幸せになってほしいから。一番大好きだから。
 特別、なんだよ。



 「ありがとう」と、ポエットの手からユーリの手に渡ってリボンがほどかれる。そして、中から出てきたのは……
 コウモリの形のチョコレート。
 ね、ユーリにぴったりでしょ? お店で見つけたとき驚いちゃったの。

「ありがとう、ポエット。今までで一番のバレンタインデーだ」

 優しい笑顔。テレビとか雑誌とかじゃ見せてくれないユーリの表情。ポエットは一番好きなの。

「私はお前から貰えたことが何よりも嬉しい。いくら礼をいっても足りないよ」



 三回目の「ありがとう」と一緒にもらった額へのキス。チョコレートの甘い匂いがする。



 ユーリの顔を見たら、ほっぺたが熱くなっちゃって、心臓もドキドキしてる。どうして?
 まともに見れなくなっちゃったっ……。



「えっと、えっと!! みんなにも渡しに行かなきゃっ!! お仕事のジャマしちゃってゴメンナサイッ!!」

 入ってきた窓から出ようとすると、「アイツらにもあるのだろう?」との言葉。
 はい、あります。
 ドアを開けてくれる。

「ポエット」

 呼び止められてふり返る。うつむいているユーリ。ちょっと間があって、

「……その……あのチョコレートは……他に渡すのと同じものなのか……?」
「ううん、違うよ。あれはユーリにだけ」

 笑顔で答えて「いってきます」って走り出す。





 あのチョコは特別。ユーリだけの特別。
 ポエットもユーリにとって特別なのかな? そうなれればいいなって思っちゃう。



 ああっ!! はやくみんなに渡しに行かなくちゃ!!



end





話を温めすぎてわからなくなりました。
チョコを作るシーンがかけたので満足。
一般的なバレンタインデーに仕上がりました。
裏テーマのキスは額。

2003/02/28