蒲公英




 ポエットがお土産にと持ってきたのは、地球に咲く花だった。
 ホワイトランドにもメルヘン王国にも咲くことのないそれは、大地に這うように葉を広げ、花だけが遙かに高い空を目指す。





「……これは?」

 ユーリは不思議そうにポエットから渡されたものを見つめる。

「う〜んとねぇ……太陽のお花!」
「太陽の花?」

 「うん!」と笑顔でポエットはうなずいた。

「それが名前なのか?」

 ユーリからの問いにポエットは首を振る。

「ちがうよ。そのお花さんのお名前はたんぽぽ。でもね、太陽のお花だと思ったの」
「黄色いからか?」

 柔らかい笑みを浮かべてユーリは言う。

「うん。それに、太陽みたいでしょ」



 たくさんの花びらはまるで太陽のよう。



「そうだな。……それで?その手に持っているのは?」

 ポエットのもう片方の手にあるものを問う。
 ポエットはこぼれそうな笑顔を浮かべて、それをユーリの前に差し出した。

 ふわふわとした何やらまるいもの。握っている部分はちょうどたんぽぽの茎に似ている。

「これはー、たんぽぽさんの種なの!」
「ほぅ……」

 ユーリは物珍しそうに眺める。

「見てて」

 思いっきり空気を吸い込んで、そのふわふわとした種にふぅーと息を吹きかける。



 ふわふわした種が舞い上がった。
 よく見ると、ふわふわとしたものの下に小さな種がついている。



「綺麗だな」
「うん!」





 風に乗ってゆっくりと土へ落ちていくたんぽぽの種。

「今度の春にたくさんたんぽぽ咲くといいな。そうしたら、一緒にお花見しようね」
「ああ。でも……」

 「なあに?」と顔をのぞき込んでくるポエットの頭を撫で、

「なんでもないよ」





 この地でその種が花を咲かせなかったとしても、ポエットと一緒なら……。



end





たんぽぽの季節から離れてきてますが、まだ咲いているのでOKでしょう。
と、言うわけで。久方ぶりのユリポエです。
ふわふわ、ほのぼのな感じが書けるので、このカップリングは好きです。

2004/05/27