うるとら・ばたふらい





 何やら教諭室が騒がしいと思えば。

「あ、せんせー!」

 座っていた椅子ごとこちらを向いて、大きく手をふった。
 んなことしなくったって、わかってるってーの。

 お前、存在感ありすぎ。





 とりあえず、俺の席の隣に座らせる。ここは荷物置き場になってるから、誰も来ない。

「今日は何しに来たんだ? お前大学は? それに仕事−−−」
「先生ったらいきなり質問攻め? 別にいいけど。今日の大学は午前中だけで、お仕事はオフなの」
「珍しい」

 「そんなこともあるわよ」と微笑む。

 ……モデルなんぞやってるから、すごく綺麗に見えるのな。実際、すげー綺麗なんだけど。



「ねぇ、先生?」
「あ?」

 真顔。ちょっと驚く。



「一つ質問ね。先生にとって、私って……何?」



「は?」

 いきなり学校に押し掛けてきたかと思えば。

「は? じゃなくてー、先生にとって、私って何?」

 おい。
 二人きりならまだしも、他の教師がいる前でそんなこと聞くな。
 そして、お前らもなにげに聞き耳たててんな。



 ……ああ、くそ。



「……蝶」
「えっ?」

 机の上の荷物を適当に整理しながら、いう。

「俺なんかにつかまっちまった、哀れな蝶」

 これで満足か?
 照れ隠しに頭をがしがしかいて。ちらりと顔を見てみれば、真っ赤で「あ、可愛い」とか思ったり。
 椅子にかけていたジャケットのポケットから100円玉を2枚取り出して、未だ動きが止まっているミサキに渡す。

「ミサキ。購買に行ってコーヒー買ってきてくれ。365のな。あったかいやつ」
「あっ……うん!!」

 幾分早足で教諭室を出ていく姿を見送る。





 ああくそ。
 こっちが恥ずかしい。今さらになって、体中の熱が顔に上がってくる。

「今の80点っていうところですね。先生?」

 肩を叩いて穏やかに言ってきたのは、俺の恩師でもある教師。
 何が80点なんですか……。
 なんだか一気に疲れた気がする……。



end





5000Hits記念フリー小説だったもの。
DTO担当曲「ULTRA BUTTERFLY」の歌詞から連想してみました。

「明かりの消えたひそやかな闇に 蝶の清らかな舞が色をつける」って
エロい連想をしてしまうのですが……。

「365の温かいコーヒー」って言うのは、365mlの紙パックの飲み物で、
コーヒーの他に烏龍茶やココア、ミックスジュース等種類がありました。

2004/09/05