「あーもうっ!! いい加減にやまねーっすかねっ!!」

 洗濯物の入ったカゴを足下に置いて、愚痴る。
 ボクも洗濯を手伝っていて、山ほど中身の入ったカゴをもっていた。
 窓の外は雨が降っていて、そんな日がもう3日も続いている。

「洗濯物は貯まる一方だし、やらなきゃいけねー仕事は増えてくし……」



「ね、アッシュ君は雨嫌い?」
「え?」

 カゴを置いて隣に立つ。

「雨。今空から降ってる、雨。嫌い?」

 窓を指さして、顔をのぞき込むように聞く。

「えっと……嫌いってワケじゃないッスけど……洗濯物とか貯まっちゃうし、ちょっと気分滅入っちゃったりするから……」

 苦笑。キミも、ボクも。

「ボクはねー、好きだよ。」

 ひたり、と窓に手のひらをつける。ちょっとだけ、冷たい。

「降ってるときの静けさとか。あ、雨が降ってるといつもの風景も違うよね。それから、雨が止んだときの嫌みなくらい澄んだ空気が好き」

 優しい表情。目があったから、微笑んで。
 ちゃんと聞いてくれてるんだって思えて嬉しい。

「それに……」
「それに?」

 頭をアッシュ君の肩によせて。

「キミと一緒にいられる時間が増えるから、雨が降ってくれるとすごい嬉しかったりするんだ。……いけないかな?」

 目線は外に向けたまま。





 すぐに答えが聞けないことにちょっと不安になる。
 ああ、また困らせちゃったかな……?

「ごっ……」

 謝ろうとしたら、肩を抱き寄せられて……そのままキスされた。

「……ッあー……なんてこといってくれるんすか、この人は……」

 ぎゅうと苦しいくらいに抱きしめられる。

「飽きるほど側にいますよ。雨の日でも晴れの日でも、ずっと、側に」

 何とか腕を背中にまわして、抱きしめ返す。
 嬉しいな。





 ちょっとだけ寒い雨の日だけど、君といられれば温かい。
 本当に、本当にずっとそばにいてね。
 ……約束だよ。



end





5000Hits記念フリー小説でした。

雨は好きです。作中でスマさんに代弁していただきました。
実は「止んだあとの嫌みなくらい澄んだ空気」という台詞を
使いたかっただけのお話……だったり。

久しぶりにアッスマで甘いお話。しかも、短い。
スマさんの性格がわからなくなってきましたよ……? 乙女入ってますね。

2004/08/21