あなたが好きです。




 ただ単純な感情。



 君のことを考えるとドキドキしたり。
 君が笑うと、自分まで幸せになったり。
 子供みたいに、目をきらきらさせて何かに夢中なってるときは、少し嫉妬してしまったり。



 すごく すごく
 単純な感情。





 あなたが好きです。





「今から帰るから」
 彼からそう電話をもらって、夕食の仕上げにとりかかる。



 時刻、午後11時。
 既に「夕食」と言える時間ではないけれど。
 夜中なので、幾分お腹に優しいもの。そして、彼が満足するもの。
 鍋に火をつける。嬉しそうに食べてくれるであろう彼の顔を思い浮かべると、こちらの顔まで緩んでくる。



 待ち遠しい。
 今日は立場が逆だから余計にそう感じる。
 いつも彼はこんな気持ちなのかと理解した。





 早く逢いたい。
 愛しい貴方に。
 だから、早く帰ってきて。





「……ただいまぁ〜」
「お帰りなさいッス。寒くなかったッスか?」

 笑顔でお出迎え。

「ん〜だいじょうぶだよ。それより、いい匂いだねぇ」

 この反応にも愛しさを感じる。

「カレーうどん、作っておいたッス。食べますか?」
「もちろんでしょ!!」

 そういって腕に抱きついてくる。


 ……ああ、可愛い。可愛い。
 でも、今はとりあえず、おさえておこう。





 さっき思い浮かべたのと同じ笑顔でカレーうどんを食べるスマイル。
 その合間に出てくるのは、今日の仕事のこと。


 ステージ上ではクールを装い、インタビューではまた違った一面を見せるのが、スマイルの売りといってもいい。でも、自分といるときだけに見せる姿に少なからず優越感を感じる。

「ね、おかわりは?」
「夜も遅いですし、それだけでガマンしてくださいッス」
「む〜……」

 背中でそんな声を聞きながら、後かたづけを始める。

「ごちそうさまー」
「お粗末様です」

 食後のお茶を差し出して、食器を受け取る。

「ちょっと待っててくださいッス。一緒にお風呂入りましょう」



 さらり、と。



「−−−っ!!?」

 後ろでお茶を吹き出す音が聞こえた。
 くるりと振り向いて、寂しそうな表情を浮かべて。

「嫌ッスか?」
「……っけほっ……い……イヤ……じゃない……けど……」
「じゃあ、待っててくださいね」

 にっこり微笑みかけて、後かたづけを再開した。





 いつ頃に建てられたものかは知らないが、この城のバスルームは広い。そのおかげで、こうやって一緒にはいることも簡単に出来る。
 ときどき啄むようなキスを交わして、じゃれあいながら甘いひとときを過ごす。

 離れていたほんの少しの時間だって取り戻したい。

 のぼせそうになったところで上がり、そのままベッドルームへ向かう。





「んっ…………ぬれちゃうよ……」

 身体を軽く拭いただけ。髪はほとんど濡れたまま。

「寒い?」
「……ちょっとだけ」
「大丈夫ッス。すぐ、温めてあげる……」

 こぼれ落ちる彼独特の笑い声も逃さないように、深くくちづけた。





「……っはぁ…………。綺麗……花びらみたいだね……」

 鎖骨の下につけられた紅い痕をなぞりながらいう。

「んっ……スマイルの方がはっきり見えて、綺麗ッスよ」

 首筋から胸元にかけてつけた紅い痕を彼のマネをしてなぞる。
 青い色をした彼の肌。その肌の感触を知っているのは自分だけ。
 そして、触れることを許されているのも自分だけ。

「動いても……いい?」

 実は下方で繋がっていたり。

「ヤダ」
「……なんでッスか」

 眉間シワをよせる。

「もうちょっと中にいて」
「中、きゅうきゅういってるんですけど……」

 根本までくわえ込んでいるにもかかわらず、まだ奥へと飲み込もうと中がうごめく。

「やぁだ。最近、全然一緒にいられなかったからっ……ちょっ……あぁっ!!」
「ごめんなさいッス」

 抑えられません。そんな可愛いこと言わないでください。
 細い身体を抱きしめて、律動を開始する。





「んあっ……やっ……だぁ……。そこっ……だ…………」
「ここ?」
「……っ!!」

 知ってる。感じるところは自分が一番知り尽くしている。
 中だったら、今、わざとかすめたところと……指じゃ届かない、奥深く。
 執拗にそこを攻めると、快楽からの涙を流しながら首に腕をまわしてきた。
 さらに密着したことで、二人の腹の間でスマイル自身も刺激を受けることになる。
 それを意識して、動きを速めていく。

「ああっ……あ……しゅっ……! もっ……もぅ………………っ!!」
「……イきたい?」

 吐息を含んだ声で耳元で囁く。
 首にしっかりと抱きつきながら、こくこくと首が振られる。

「いいっ……ッスよっ。いつでもっ……!!」

 実際のところ、自分も限界だった。

 奥深くを突き上げるような動きに変え、砕け散りそうな身体を力強く抱きしめる。
 絶えず喘ぎ声がもれる口に自分の唇を合わせる。



   酸素が足りなくてくらくらする。それは彼も同じこと。



「んーー!! −−−んんっ!!」

 腹の間で熱いものが弾ける。
 それとほぼ同時にきゅうっと奥で締め付けられ、彼の中で絶頂に達した。





 気を失ったままの彼を抱き上げて、身体を洗うために再びバスルームへ。
 後処理はここまでしてしまった自分の役目。





 腕の中でまだ目を覚まさない愛しい人にふれるだけのキスを捧げた。

 「あなたが好きです」

 そんな、ただ単純な感情をのせて。



end





本当に、たいへん長らくお待たせいたしました。
3000Hitsキリリクのお届けです!!

キリ番を踏んでくださった、あや様から、
「アッシュがスマのことを好きで好きでたまらない」
という素敵なシチュエーションリクをいただいたのですが、
上手く消化……出来てませんね。
雰囲気は甘い感じにしてみたのですが、いかがでしょうか?
そして、当サイト初! と、なりますエロ……。さらに精進します、はい。

大変遅くなり申し訳ございません。
このお話はあや様のために書き上げました。
拙いものではございますが、捧げさせていただきます。
リクエスト本当にありがとうございました!!

2004/10/11