薔薇、血、日常
「ねぇ。ボクもう飽きちゃったんだけど」
そういって棺桶の中に薔薇を放る。
これは日課で日常。
城主ご自慢の庭園から毎朝(実は昼だけど)一輪折ってきて、安らかに眠る城主に渡す。
これを始めたのはなんとなく。
彼は薔薇が好きだったから。
深紅のが一番好きなんだってさ。
わかりやすいよね。
−−−血、の色。
…………
そういや、あの庭園の世話任せられてたっけ。
忘れてたよ。
何百年前の約束だっけ?
「ねーいい加減起きようよー」
彼の周りには枯れた薔薇がいっぱい。
放り投げたらそのままだしね。
花びらは黒くって、まるで彼から流れ出して酸化した血液のよう。
「ね。血って美味しい?」
興味あるんだよねぇ。
…………
試してみていい?
部屋のすみに置かれた机からナイフを取り出す。
「ほら、ボクってユーリみたいに牙ないからさ」
笑いながらユーリの首もとにナイフを当てる。
あ。
心臓に近い方が美味しいんだっけ。
違う。それは肉か。
まぁいいや。
間違って突き刺しちゃいそうだし。
ナイフを引いて…………血が溢れてくる。
痛みで目、覚ますかと思ったけど、そんなことはなかった。
……痛覚ないんかい。
心でツッコミをいれてる場合じゃないか。
せっかく試せるんだから、無駄にしないようにしなきゃ。
…………甘い。
これなら、血だけでも生きていけるねぇ。
もっともらうよ?
舌を這わせて。止まりそうになったら、歯を埋めて。
存分に堪能させていただきました。
ゴチソウサマ。
黒かった花びらに赤が戻った。
吸血鬼に血を吸われたら吸血鬼になるっていうけど、吸血鬼の血を吸ったらどうなるんだろうねぇ。
「ね。日課一つ増やしていい?」
薔薇をあげるのと、ユーリの血をもらうの。
いいよね。
だからさ。
ボクに全部吸われる前に目、覚ましてよ?
end
ずっと考えていたスマとユーリのお話。
これでも、スマユリのつもり……らしいです。
……あまり上手く落ちなかったですね〜……。精進、精進。
私的設定では200年の眠りの後にユーリとスマは出会うのですが、
今回は眠る前からの知り合いという設定になってます。
何時もお世話してくれてる姉さんに押しつけさせていただきました。
これからもよろしくお願いします。(迷惑)
2003/06/20