Can't Stop My LOVE 1




 音も立てられず、廊下を走った。
 音を出したいのに出さないようにしてドアを閉める。
 そして、そのままドアに寄りかかって座り込んだ。





 まだ、あったんだ……「心」



 ショック受けて、泣ける「心」あったんだ。





 結局。
 自分はどちらの「一番」にもなれなかった。
 ボクはね、どっちも「一番」だったけど、どっちかって言われたら、アッシュを選んでたよ。


 ……キミの「一番」にもなれなかった。





 たぶん、もう、
 いつものように笑えない。





 全部どうでもよくなった気がした。
 もう、
 全部「シオドキ」な気がした。





 「一番」好きな二人が誰よりも幸せになるには
 自分はいちゃいけない。





 持っていきたいもの、たくさんあるけど……持っていけない。





 テーブルの上に置かれた小さなキーホルダーが目に入った。
 金の板に十字架が打ち込まれたデザイン。





「スマの目の色に似てたから……安物ッスけど、受け取って欲しいッス」





 ちょっと前、ソロでのツアーから帰ってきて、手渡された。





「気がないなら……何もしないでよ……」



 握りしめて、再び涙を流す。





 おもむろに立ち上がり、他のネックレスとキーホルダーのヘッドを取り替えて、首にかけた。





 書きたいことも、たくさんあるけど……書かない。

 ただ一言。「バイバイ」と。





 腕章もはずす。
 後のベーシストのために。
 ここから逃れるために。





 ボクのお下がりでゴメンね?





 アッシュかユーリ……他のメンバーとかが新しいのくれるかもしれないけどさ。





 最後に「アリガト。」と言って、部屋を出た。





 満月がやけにまぶしかった。





−−−−−


絶妙なバランスを保っていた全てが
崩れ去り 動き出す
最期へ辿り着くまで止まることはできない
全ては月に始まり 月に終わる
月の狂気に囚われた者たちの最期の調べ


−−−−−



to be continued





遂に始まりました。無駄に長くて暗いDeuil三角関係話。
考案当初はこんなに暗くなるとは思ってもいませんでした。

第一話(プロローグというポジション)はスマの一人語りですが、
その他は普通の小説と同じようになります。

スマが何にショックを受けて、何に泣いたのかは次で。

2002/11/12