出会い。始まり。




 思ってみれば最悪の出会い。





 街にあった募集のチラシ見て、面接受けに行ったら、即決。



 初めて吸血鬼に会いました。
 闇に属する生き物の中で一番気高くて、一番美しいと言われる種族。
 思わず見とれてしまいました。

「これから他のメンバーに会ってもらうが……」

 彼−−−ユーリが少々語尾を濁らす。

「……癖が強いが……決して悪い奴らではない。慣れるまで頑張ってくれ」

 「はい」とうなずこうとした瞬間。

「うわわっ!!」



べしゃ。



 何か見えないものに足を引っかけたようで前に突っ込んだ。

「アッシュ!!?」

 ユーリの慌てたような声が聞こえる。
 それと共に特徴的な笑い声も微かに。

「スマイル!! 客人にちょっかいをかけるのはやめろと言っただろ!!」

 ……スマイル?
 額を擦りながらふり返る。
 見るとユーリが何もない空間に叫んでいた。……いや。何かがそこにいる……?

「ユーリ、あれ何?」

 すぅっと姿を現した人物に「あれ何」よばわりされた。

「……よりにもよって一番最初に会わせたくない奴に会ってしまった……」
「なんか言った?」
「いや。新しいメンバーだ」
「ああ、あの張り紙で来たんだ」

 床に座ったまま二人の会話を聞いていた俺の前に「スマイル」と呼ばれた人物がやってくる。
 顔をのぞき込んでいるが、その単眼は明らかに俺への興味を映してはいなかった。

「物好きだね、キミも」

 あまりの一言にきれそうになるが、ここはおさえる。

「アッシュ、これはスマイル。バンドではベースを担当している」

 ユーリもスマイルを物扱い。
 このバンドは人(ではないが)を物扱いするのが主流なのですか?
 さっきの発言を心に引っかけながらも、スマイルに向かって手を差し出す。

「アッシュッス。これからよろしくお願いします」

 スマイルは不思議そうに見てから、軽く手を重ねた。



 うわ。細っ。これがベーシストの指?



「よろしく、アッシュ」

 簡潔な挨拶をして、スマイルは別方向へ歩き出した。
 「これから退屈しなくてすみそうだねぇ」という、不穏な一言を残して。





 思えば最悪の出会い。
 でも、君と出会えた最高の出会い。
 全てはここから始まった。



end





もともとは、挑戦予定だったお題の一つでした。
しかし、ジャンル入り乱れた上、書ききれないと思ったので、挑戦を断念。
結構前に書いたものですが、どうやら日の目を見せることが出来ました。

これが私のアッスマ出会い編です。
「足かけスマがかけて幸せv」だったようです。当時の自分……。

2005/04/03