妹背山
暇つぶしにプリントを切って、正方形を二つ取れる長方形を作る。二つの正方形の間、半分まで切れ込みを入れ折り始める。
しばらくして、
「ごめんねー。思ったより遅くなっちゃった……って、何してんの?」
待ち人が帰ってきた。
「べつに」
相手はこれから着替えるだろうから、顔を上げない。
「折り紙?」
着替えながらちらちらと見てくる。
答えない。もう少しで出来るから。
ぱたんとロッカーの閉まる音。
頭の上から影がかかる。
「鶴?」
「ああ。出来た」
テーブルの上に鶴が二羽現れた。
「相変わらず器用だよねー」
暇もつぶせたし、持って帰るほどのものじゃないし、捨てるか。
「ちょっと待って!」
手を出す前に、頭部を掴み持ち上げられる。
「せっかく作ったのにもったいないでしょ」
「別に大したものじゃない」
「お前にとってはだけど……って、何これ。羽が繋がってるよ」
羽の一片が繋がる連鶴。
「えー凄くね! めっちゃ仲良さそう」
「名前忘れたけど、夫婦だか兄弟だかを表してんじゃなかったか? それ」
「へー名前あるんだ、凄いねー。ね、これもらっていい?」
「別に良いけど」
そんな折り鶴もらってどうするんだ?
疑問が解決しないまま、バッグの中へ潰れないようにしまわれてしまった。
「名前、調べとくね。じゃ帰ろうか」
「ああ」
荷物を持ち、立ち上がる。切れ端になったプリントは丸めて、ゴミ箱へ放る。
ドアを開けていたあいつの脇を通り抜け、外へ出た。
実は、名前は覚えていた。
「妹背山」
仲がいい夫婦の象徴で、結婚式に使われたりするんだ。
それを言わなかったのは、ひねくれた自分の心か。それとも見つけて欲しかったからか。
答えがでないまま、あいつの隣に立った。
end
テニミュの当日券に並んでいたときに出来た話……だったと思います。
続編もあるのですが、書くかどうかは(本当に)微妙。
同じく連鶴のお話なのですが。
2007/05/27