自分のいる場所からお前のいる場所。知りたいのはその距離。
手が届かないほど、遠くにいればいい。
そう、思う。
3月中旬。天気は快晴。時期的に桜は咲かないが、卒業式日和。
今日、3年生が卒業した。
中等部校舎から正門へ続く広い道には、先輩との別れを惜しむ生徒がそこかしこにいた。
それは自分たちも同じで、今さっきテニス部の先輩達と別れたところだ。
「……んなに泣かなくても、一生の別れじゃねーだろ」
でかい図体で泣かれるのは、結構鬱陶しい。
「だっ……だって、も、ぅ、学校で……会え、ないからっ……」
鳳と同じクラスの奴から聞いたところ、卒業式の最中から泣いているらしい。もっと言えば、昨日の予行練習の時も泣いていたそうだ。
「校舎が隣になるだけだろうが」
「それがかなり大きいんだよっ!!」
泣きはらした赤い目。涙を拭っていたハンカチを握り締めて言う。
一度あがった顔だったが、またすぐうつむき、泣きはじめた。
ああ、なんでこんなに近くにいるんだろう。
どうして、手の届くところにいるんだろう。
思い切り腕を伸ばして頭を引き寄せる。半ば、無理やり自分の肩に顔を押さえつけた。
「みっともねぇ面でいつまでも泣いてんじゃねえよ。ほら、特別に肩、貸してやるよ」
身長差のせいでかなり無理そうな体勢だが、気にしない。
「ご、ごめんね」
同い年なのに自分より大きな腕が背中にまわされる。
肩に顔をうめて、声を殺しながら、鳳は泣いた。
「いつでも会えるだろ…………恋人、なんだから」
あやすように優しく頭を撫でる。
柔らかいだろうと思っていた髪は、本当に柔らかかった。
「……ん」
微かな返事。
頭を抱いていた腕を背中にまわし、少し強い力で抱きしめた。
開くはずのない隙間を期待して、手の届くこの場所にいる俺は、愚か者か?
end
とりしし前提のひよ片想い。卒業式。比較的ありがちな話です。
二人が離れることによって共有する時間が減る。
それ故に開くであろう「隙間」を期待しているひよ。
一見無意味なタイトルか、無駄に長いタイトルを付けたかったので、
結局成り行きで決定。 内容にあっているかは不明。
2004/12/01