旧お題 02クラス
教室のある本館から離れた特別教室棟への出張掃除は何かと面倒で。
そこでさらにゴミ捨てなど命じられてしまうと、帰りのSHRに間に合わなくなってしまう。
それはわかりきっていることなので、焼却炉からの帰り道もそう慌てることはない。
教室へ向かう廊下を歩いていると案の定、自分抜きにSHRが終わってしまったらしく、クラスメイトの一人が自分の横を通り過ぎていった。
全開に開かれた後ろのドアから教室に入り、自分の机へと向かう……。
「……おい」
俺の机に突っ伏している、身体のでかいそれに声をかける。
それの正体は既にわかりきっているのだけれども。
「あ、日吉おかえりぃ。もうSHR終わっちゃったよ」
それはゆっくりと顔を上げながら、ややのんびりとした声で答えた。
「わかっている。その前に、お前はどうしてここにいるんだ」
「どけ」と目で訴えると思いの外、素直に椅子から立ち上がった。
それ−−−部活仲間である鳳長太郎とはクラスが違う。俺は5組で、こいつは6組で隣り合っているが。
「これ教えてもらおうかと思って」
帰り支度をしている俺の前に差し出されたのは……数学の教科書だった。
「どっちのやり方でも同じだから、やりやすい方を覚えればいい」
連立方程式の解き方を一通り説明して、問を解いてみるように指示を出す。
「よっし。がんばってみる!」
ノートに走るシャーペンを見る。問題の式を書いて、次の式は間違っていない。どうやら、筆算方式を取ったらしい。
「……なんでいきなり教えてくれなんてきたんだ?」
「だって、日吉と一緒に授業したいんだもん」
「……は?」
ノートに向かっていたはずの鳳は顔を上げて、こっちをじっと見ていた。
目線をはずす。顔に熱が集まってくる。
「もうクラス替え無いだろ? 今回は絶対同じクラスになれると思ってたのに、違うしさ。日吉と同じ空間で授業してみたいんだ」
にっこり笑ってそんなことを言う。
確かにクラス替えは、二年になるときに一度あるきり、もうない。
「だからさ、今度の中間頑張って、同じクラスになる!!」
そういうことだったか……。
この学園では、数学と英語は実力順(テストの点数)でクラス分けされる。そのクラス分けは定期テストごと5クラス編成されるので、数学を苦手とする鳳と同じクラスになったことはなかった。ちなみに、英語はあまり自分が得意ではないためだったりする。
「お前、今クラスなんだ?」
「えっと、B−2だよ」
ちょうど真ん中。同じクラスになるには一クラス跳ばなくてはならない。
……はぁ。
「……数学で同じクラスになりたいなら、死ぬ気で頑張ることだな」
「うん! それから、英語でも一緒になりたいから、あとで教えてあげるね」
「え?」
「英語は、ある程度ヤマはれれば出来るし。日本の英語は暗記物とほとんど変わらないから、大丈夫」
「俺がヤマはってあげるー」とか言いつつ、再び数学の問題に取りかかった。
まぁ。交換条件としてはいい。苦手な教科が減るのはいいことだし……。
……だし? まだ何か理由があるのか?
……まさか。いや。違うと思いたい。
自分の中に生まれていたよくわからない感情と共に、中間テストまでの放課後は続いてゆくのだった。
end
高校時代、数学はテストの結果でクラス編成がされていました。
氷帝はそれ位してるかなーとか思って採用。ついでに英語も追加。
二人が同じクラスになれなかったのはある意味萌え! と思ってたら、
キスプリでクラスが違うと判明。
……ええ、素敵な萌えですよ。
クラス分けの仕方は、上からA,B-1,B-2,B-3,C。
ちなみに、数学ではひよがAでちょたは作中通りB-2。
英語では、ひよがB-1(苦手でも中の上)でちょたがAです。
2005/01/18