旧お題 03後ろの席
いつものクラスを離れて授業を受ける。
前までは自分のクラスで、席だけ替わってたからちょっとだけ違和感があったけど、今ではもう慣れた。
3階の空き教室を使っていて、窓から見える風景はかなりいい。
授業には関係ないのだけれど。
席順が自由だったら最高だったんだけど、まあしょうがない。
クラスの出席番号順に並んで、廊下側よりの真ん中の列、後ろから2番目という席を割り当てられた。ちなみに、彼は窓際、ちょうど真ん中。
そう、ここから見えるのだ。彼の表情が。
彼と同じ空間で授業したくて、死ぬ気で頑張った前回の定期テスト。
努力が実ってクラスを1つ飛び越えることが出来た。
それほど、彼の教え方が上手かったと言える。
「最初の計算問題だけは完璧にしろ。後はそれの応用でどうにでもなる」
そういって計算問題を中心に繰り返し繰り返し解いて、ときどき応用問題をやった。
その結果、ほとんど手の着けようがなかった問題が、自分でも驚くぐらい解けるようになっていたのだ。
『どうもありがとー』
心の中で感謝してから彼に目を向ける。
真剣に授業を受ける彼の横顔に、目をうばわれるのはいつものこと。
相変わらず端正だなーとか、綺麗だなーとか、こっち見ないかなーとか思ってしまう。
まぁ、一番最後は絶対に有り得ないことだけど。
先生が黒板に練習問題を書き出し、解くように指示を出す。
それをノートに写し、解きはじめる。
実は、前にいたクラスの先生より、このクラスの先生の方が教え方が上手いんじゃないかと感じる。
基本がわかったせいかもしれないが、なんだかよく頭に入る。今やっている不等式の解き方だって、何事もなく、つっかえることもなく解くことが出来るのだ。
少し教室がざわめく。
解き終わった生徒が近くの人と話し始めたのだ。ちょっと遅れてノートから顔を上げ、見るのは彼の方。
『……あれ? まだやってるの……?』
彼はまだ俯いたまま、シャーペンを走らせていた。
自分が5分ちょっとで解けてしまうような問題を彼が苦戦するとは思えない。
「問四を……鳳。前に出てやってみてくれ」
「あっ、はいっ」
先生の声に驚き、慌てて席を立つ。
ノートに書いた解き方をそのまま黒板に写して、席に戻ろうとしたとき、彼の方に目がいった。
ぱちりと目があったので、にっこりと微笑んだのに、彼はきっ、とにらみ返してきた。
……切ないよ……。
苦笑を浮かべて視線を机の上に落とすと……
『ああ、そっか』
納得した。これは、自分の席からじゃわからない。
もしかしたら、これが彼の数学が得意な理由かもしれない。
彼は努力を怠らない。テニスにしても、勉強にしても、昔から続けている古武術にしても……だ。
解答した問題は当然の事ながらあっていた。
それで満足してはいけない。これからは彼を見習おうと思った。
ずっと長く、彼と同じ空間にいるために。
end
……タイトルにあってない気がするんですけど、気のせいですか?
後ろの席には後ろの席ですよ!斜め後ろの席ですけど。
2本目の「クラス」から繋がってます。無事同じクラスになれました。
もちろん、英語もです。
空き教室の使用や出席番号順で並んでいるのも経験から採用しました。
2008/11/29