Sweet Lovers




 人当たりが良く、育ちも良い。加えて、容姿も性格も良いという、良いことずくめのアイツが、異性にもてないはずがない。
 今のような関係になる前にも、たくさんのチョコレートとプレゼント−−−当時はこの日が誕生日とは知らなかった−−−を持って歩いているのを見た記憶がある。



 自分の誕生日にもらったクロスのネックレスをいじりながら、明日のことを考える。
 絶対、絶対に多大な期待をしている。これだけは、確信できる。
 それに、誕生日プレゼントをもらってしまったのだ。返さなければならないだろう。
 ……が。アイツは誕生日でない方も期待している。今この時期、買うのをためらう品。
 普通の菓子でならなんとか買うことはできそうだが、せっかく渡すのだから、そういう仕様になっているのが好ましい気がする。

 まぁ、これはまだ置いておくとして、誕生日プレゼントだ。
 何を渡せばいいのかまったくわからない。いつだったか、出かけ先で見つけたアンティークの置き時計をやたら気に入っていたが、中学生には手の届かない品物だった。
 このネックレスと同じ価値の物を渡したいが、これもまた問題がある。純銀製の上、スウェーデン王室御用達の職人が作った物。めちゃくちゃ価値が高い。

「どうして、こう、返すのに困る物をくれるんだよ……」

 溜め息をついたところで問題が解決するわけではない。
 何か、実用的なものがいいだろう。何か良さそうな物がないか、部屋を見渡してみる。

 あ!!

 そういえば……。もうすでに買い換えてしまっただろうか? それでも、普段でも使えるから、複数あっても大丈夫だろう。
 よし、あれに決めた!!





 2月14日。PM7:30

 案の定、今年も大きな紙袋2つを両手に持ち、二人で並んで帰る。
 もちろんのこと、この紙袋は鳳自身が用意した物ではなく、プレゼントとチョコを渡してきた女の子が「必要だよね」ということで、くれたのだという。気が利く。と、でも、印象づけたいのだろうか。それも、多分こいつには無駄なこと。こいつの頭は比較的単純に出来ている。

「女の子って、こういうイベント好きだよね」

 苦笑いをしながらチョコレートとプレゼントが混ざった紙袋を揺らす。端からのぞく、かわいらしく包まれた物のいくつかは本命なのだろうと思う。

 いつもの通り、別れる道に来て、名残惜しげに立ち止まる。
 幾分不安げな表情。まだ、俺からは渡していない。

「えっと……」
「荷物になると思って、今まで渡さなかったんだ」

 自分のバックの中から、青い袋に入ったプレゼントを取り出す。

「誕生日おめでとう。長太郎……ッ!!?」

 ばさっと袋が落ちる音がした。ものすごい勢いで抱きしめられたのだ。

「ちょっ……! なにっ……!!」
「よかった! ありがとう、若!! 俺、若からもらえなかったらどうしようってずっと思ってたんだ! でも、よかった! ありがとう!!」

 そして、そのまま口づけられた。人通りが少ないとはいえ、これはまずい……。と、思っていたら、簡単に解放してくれた。それでも、まだ抱きしめられたまま。

「本当、ありがとう。俺、生まれてきてよかった」
「ああ、おめでとう」

 差し出そうとしていた腕ごと抱きしめられているので、抱きしめ返すことが出来ないのが悔しい。



 ここは世界で一番穏やかな場所。こいつが生まれて、生きてきてくれたおかげで出来た、幸せな場所。
 彼を生かせてきた、全てのものに感謝を−−−。





 帰宅して、携帯を開いたらメールが届いていた。差出人はもちろん、鳳。

題:
ありがとう!
本文:
誕生日プレゼントどうもありがとう!
カーディガン、すごい綺麗な色だね。
この前引っかけて、破いちゃったままだったから、明日から着ます。
それと、一緒に入ってたチョコ。あのホテルのだよね。高いのにありがとう。
お礼は今日にでもしたっかけど、今週末まで取っておきます。
それじゃ、また明日。おやすみなさい。

 簡単に返事をする。最後から2行目は無視の方向。
 とにかく、喜んでもらえたようなので、本当によかった。



end





本当は、ちょたの家まで行かせて、プレゼントを目の前で開けるシーンを書きたかったのですが、
そんなことしたら、ひよが帰ってこれないっ……!
と、いうわけで、帰り道です。
裏テーマも健在。道ばたでちゅうしてます。若いって良いね!
バレンタインと同じ日が誕生日ということで、お誕生日おめでとう、ちょた。
幸せになってください。

2005/02/22